ギターとシールドの相関を考えてみる 1


ケーブル選びの面白さは楽器が変わると、ケーブル選びも変化するところにあります。

ただ、組み合わせはいくつもあるというところは大きな課題にもなります。すべてのケーブルを知るのは困難ともいえます(笑)。

ギターの持つ要素

ケーブルとの相関関係を持つ要素として、ギター側が持つ要素はだいたい以下のような項目です。

  • ピックアップのタイプや出力傾向、セッティング
  • ボディの形状(ソリッドボディかホロウボディかなど)
  • ブリッジやペグ、ナットなどの形状や状態

また、求める音の傾向も重要です。とにかく出力の高い音を求める人もいれば、自然な減衰を求める人、サスティーンの減衰の好み、歪んでいるか、クリーンなのか、どの帯域に特徴を持たせたいのかなどで変わってきます。

ギターやアンプの部分までは多くの人がこの辺りについて考えを巡らせます。そこでピックアップや弦についても考えたりします。エフェクターについてはいうまでもありません。エフェクターは私も大好きな領域ですし、長年エレクトリックギターに関わる花形のジャンルです。

 ただ、多くの人がケーブルについては、宣伝文句に流されるままその選択を迫られています。もっとも、この範囲のことを知ることは簡単ではないというのも一因でしょう。

ケーブルを選択する機会の少なさ

とにかく比較する機会が意外にありません。また、価格に関係なくギターやスタイルと相性のよいものが存在します。一方で、メーカーとしての売りたい気持ちも理解できます。オリジナルでロールの制作をするとなるとコストがかかりますので、どうしても「これが至高のケーブルだ!」と言いたくなってしまいます。

そうなるとなかなか真実は見えにくくなってきます。

確かに最高のケーブルはあると思いますが、それはあくまでそれぞれの主観においての話に過ぎません。その点を見失うと大事なファクターを見失うことになるでしょう。

 ただし、高額なケーブルの効果というのは精神的な部分で発揮することが少なくない事実もあります。モチベーションは演奏をよくすることは歴然たる事実ですし、「貴重なケーブルで弾いている、いいものを使っているという安心感」は演奏に絶大な効果を与えます。ただし、客観的な音色や実際の演奏性についてはまた別の話です。

また、上級者になると手でわずかな違いを修正します。また、セッティングで対応できる場合もあります。しかし、それはそれほど自然なことでもないということもあるのです。

一方で、SSHではケーブルやプラグを選択できるようにしていますが、それをどう選べば良いのかというところまで踏み込めていないところがビジネス的にもサービス的にも私たちの課題です。

実際に試してもらうことが一番ですが、演奏者それぞれの環境には違いがありすぎるのも事実ですし、物理的にここを超えるのは困難です。それでもそうした選択肢を広げるための情報提供はしていく必要があるでしょう。

例1.3シングルのストラトキャスター

エレクトリックギターの歴史を切り開いてきたフェンダー社のシンボル的ギターですが、各社がこぞって同じようなシェイプのものを制作しています。細かい部分ではそれぞれ違いがありますが、思い切ってまとめて論考します。

ただし、シングルコイル、かつパッシブという条件は揃えさせてください。そこがぶれるとかなり話も違います。

キレの良いハイ、すっきりとしたミドルとロー。多彩な音作りが可能なギターですが、このあたりのストラトらしい特徴はユーザーのみなさんが活かしたいところではないでしょうか。もちろんネック材やボディ材なども含めて傾向は様々ですが、おそらくストラトの音の範疇の中で選択していると思います。

シングルコイルのギターにあまりレンジの広いケーブルを使うとなぜか弾きにくいと感じることがあります。

この現象はエレクトリックギターが心地よいと思う帯域をより強調するとよい結果が生まれることを示しているのではないかと私は仮定しています。

そこで1芯のケーブルを使うと、耳に捉えやすいハイが強調され、あるいはいらないハイミッドやローが落ちて、レスポンスよく感じるのではないかと思います。

自分の試した中では

  • mogami 2524
  • Belden9778
  • Canare GS6

などが使いやすさを感じました。この3つはケーブルの太さが近いという特徴があります。また、楽器を弾いた時に感じる一体感をより感じます。その結果、指のニュアンスを出しやすく、弦を抑えた時にシームレスでフィットする感じさえ錯覚します。

とはいえ、音の傾向はこの3つはかなり違います。

mogami2524はウエットで柔らかく、Belden9778はドライでクリスピーです。CanareGS6は2つとちがいスモーキーで独特のドライヴ感があります。

こうした違いに音選びの面白さがあるのではないでしょうか。

2芯以上のケーブルでは

あえて2芯、中には4芯、そして高級な楽器用ケーブルでは5芯、7芯などのものもありますが、これらをストラトで使うとどうでしょうか。

音はバキバキし、ニュアンスが硬くなる傾向がまず出てきます。フロントピックアップを選んでいても思わずピックアップセレクターがリアに入っているのかを疑います。全体的に太く硬くなる傾向がありますが、同時に木のニュアンスを失っていく感じもします。

とはいえ何事も使い方次第ではないかとも思います。例えば最初からトーンをかなり絞ってしまう人などにとっては逆に先に挙げた3種のケーブルより可能性があるかもしれません。コシを失わずにハイの部分を削ることができるかもしれません。

そうして考えると、ますますケーブル選びは難しくなっていきます。しかし、素のの音をどうしたいのかをまず考えることがしっかりとできれば、こうしたことは課題ではなくなるのでしょう。

こちらにご相談いただく場合は、もちろん王道の話はしますが、しっかりと目指したい音作りを伺い、そのご要望にどれだけシンクロしてご提案できるのかが鍵になってくると思っています。

次回はレスポールでのパターンを考察してみます。